第6話 F,Vの音 97 12/15 更新 |
下唇を上の歯に |
口の動きを再度検証してみます。 まず、何度かガムを噛むように口を動かしてみて下さい。 それでは唇の上からで結構ですので人差し指を上の前歯に当てて噛んでみて下さい。どうですか。あてがった人差し指はまったく動きませんね。 今度はあごをつまんだ状態で何度か噛んでみてください。こちらは元気に動いてますね。この当然の動き、この事実をはっきりと自覚してください、上の歯は頭と一体です。噛む、という作業で動いているのは下あごなのです。上の歯はただじっとしてその動きを受け止めています。この事実に反して上の歯で下唇を噛め、と指導することは罪悪以外なにものでもありません。 もう一度申し上げます。上の歯で下唇を噛むことはありません。動いているのは下あごです。 ところが、[f,v]を出すときに下あごが上下するかというとそういうことではありません。実はもっと小さくて微妙な動きが要求されます。その役目は下唇の周辺の筋肉です。その上下運動がキーポイントになります。 それでは下唇の動きについて正しい発音方法を練習してみましょう。鏡で唇を見て下さい。普通に口を閉じていると話し相手からは見えない歯に触れている柔らかい部分、口紅を塗る部分の奥の部分、がポイントです。この部分を上の歯の先端に付くように唇を若干突き出すようにして上の方へ動かして下さい。最初は微調整が必要です。子どもの頃あごにしわを寄せて「梅干しダヨ〜ん」と遊んだあの感じです。あるいはちょっとドナルドダックや歌手の森進一さんの口元の雰囲気といっても良いかもしれません。(イラストでもお見せできれば良いのですが・・) さあ、1mmで良いのです。必ず上と下の唇の間に隙間を作りそおーっと下唇の内側の柔らかい部分を上の歯にあてがいます。ハイ、ポーズ。そのままそのまま。できれば鏡を見て確認して下さい。下唇を巻き込むと致命傷ですよ。 さて、これができると後は勢いよく、唾を飛ばすつもりで息を吹き出します。ほんとに唾を飛ばしてください。強く息を吐き出す、といってもなかなかうまくいきません。しかし「唾を吐く」ように、と説明すると簡単に強い息を吐き出すことができます。どれくらい強いかというと。手のひらを広げて口元から4〜5cmのところに持っていき、息と唾が両方くすぐったいほどぶつかってくる程程です。 さあ、「ふ」「FU」「ふ」「FU」「ふ」「FU」「ふ」「FU」・・・何度も練習して違いをはっきりをつかんでください。 こうして[F]の音が出せるようになると今度は[V]に挑戦です。この音は[F]の音と同じ出し方をします。ただ、狼のように唸りながら音を出すというということです。ここで非常に大切なことがあります。それは[F]の音を出す何倍もの息のパワーがいると言うことです。[F]は息だけが歯と唇との隙間を通りぬけるときに出る無声音ですが[V]は有声音ですので、声帯を震わせて音を作る為にエネルギーが消耗されてしまうわけです。どのくらい消費されるかの計量はしていませんが、2倍くらいのパワーは出しているかなと感じます。 著者 拝 |
第7話 Rの音(1) 98 1/1 更新 |
「ぅワ行」の創設 |
それでは今回から、[r]の音について考えてみましょう。 この音も[f]同様この国では間違った発音方法が伝えられていると思います。つまり「巻き舌にして音を出す」「上の顎に舌の先を突けずにラーと言う」この非常識な常識の為多くの学習者は苦しんでいます。少々がんばってもこの指導の下ではまともな[r]の音は出せません。 コミュニケーションのためには「英作力」と「内容」同様「適正な発音」が不可欠です。この大切さを本気で認識しておられる「英語の先生」と呼ばれている方がもう少し多くおられたら、きっと旧来の発音練習法に疑義を持たれ、受け売りの「巻き舌」「ラ行」説明にはどこかで改変が加えられていただろうに、と私は悔しい思いをしています。今日まで、残念ながら、効果的な発音練習方法が確立されておらず多くの志を持つ人々はかなりの遠回りをしていたのではないでしょうか。これからは切り口を変えて、なるほどこれなら納得・簡単という練習方法をご紹介します。 まず、[r]をラ行から出そうと試みる方法はまったく逆効果です。きっとずいぶん昔、たぶん明治時代、発音できない人が「音が似ているよ」と安易な考えで作り出した愚かな訓練法だと推測します。 [r]と「ラ行」の決定的な違いは舌の先が上顎を弾くか弾かないかにあります。私たちはおよそ年齢に応じた分量日本語を話してきたわけです。長い長〜い間「ラ行」は舌の先を上顎に付けて弾くようにして発音してきたのです。この技術はあまりに単純なゆえにそれをそうやすやす変更することはできません。言い換えれば我々の脳の命令には「ラ」行=舌は上あごに当たる、という公式が硬く硬くインプットされているのです。そのルールを壊すことは、口を閉じないで「マ行」を出したり舌の先を上あごに当てずに「タ行」を出す訓練を強いる愚行、危険なことと糾弾せざるを得ません。似た音が出せる可能性はゼロではないでしょう。が、この訓練方法は百害あって一利無し。今、この場であっさりお別れを言いましょう。 さて、[r]の音を毎日毎日、一生懸命吟味してみますと見えてきます、見えてきました。我々が日常難なく出している音の中に、舌の先が上顎に付かないでも出る音がありました。それは母音です。「ア」行です。やっと見つかりました。でも、ここでよりよく[r]に近づけるためちょっとした味付けが必要です。 さあ、「ぅワ行」を創設しましょう。 例えば That's right. (それは正しいよ)といいたいとき[r]の部分で大きな口を開けて「アイt」といったほうがカタカナ英語のまま「ライト」( light にずーっと近い音として聞こえる。つまり場所は多少ずれますが舌が上顎に当たっている)よりは数段[r]寄りの音です。「アイt」と言う変わりに「ぅワt」と言うのです。どうでしょう。ずいぶん[r]に近づきますね。 中学の英語の教科書でもなんでも結構です。英文を読んでみましょう。[r]の文字が出てきたら迷わず「ぅワ行」に置き換えてください。She is a pretty girl. の pretty 今まで「プリティー」と言ってましたね。これでは良い音は出ません。頭の中は「プゥイティー」です。何度か繰り返してみてください。ハイ、その音が限りなく[r]に近い音です。 それでは本格的な[r]を目指しましょう。次なる挑戦「巻き舌は」どうするの?これは次回をお楽しみに。 著者 拝 |
第8話 Rの音(2) 98 1/15 更新 |
巻き舌?ナニそれ |
巻き舌って何でしょう。定義から始めなくてはいけません。が、よく辞書の巻末などに申し訳なさそうに載っているイラスト等から判断しますとやはり「舌の先を上顎に触れないようにしながら喉の方へ反り返らせること」と言えそうです。これは不可能な技術ではありません。私も数100人に対して実験してきましたが、まず10人のうち9人はいとも簡単にイメージ通りの形をつくりだし、その形を保つ事ができます。しかもそうすることによってきれいな[r]の音を出すことは十分可能です。 「なんだ、それじゃ何も問題無いじゃない。」と陰の声が聞こえてきそうですが、実は大問題があるのです。しかも巻き舌を使って取りあえず[r]の音が正しく出せるという事実が悲劇を生んでいます。 英語で何か話すとき[r]の音はかなり頻繁に登場します。一つの単語の中に2回現れることもあります。別の音とつながりながら出てきたりもします。そんなときはいちいち「巻き舌」を使ってられないのです。後々実際英語を使う「現場」で、特にスピード面において、応用が利かないのです。 ゴルフのスウィングにも同じことがいえます。少々おかしなフォームでも練習場なら7番アイアンで150ヤードを飛ばす事は可能です。だからと言ってやはり正しい基本を身につけないとコースという「現場」では90はおろかなかなか100が切れません。発展・向上のためにはどうしても正しい基本がいるのです。 ではなぜ巻き舌という亜流のフォームでちゃんとした[r]の音が出るのでしょう。答えは簡単。[r]を出すための要素、つまり口腔内の空気(息)の通り道を十分に狭めること、がきちんと整っているからです。ですから舌に限らず何か適当な大きさの、たとえば果物でもほおばりながら「アー」と言えばほとんど[r]に近い音が出ます。しかし、考えてもみてください。リンゴをほおばれば[r]の音が出るからといって英語で話すとき[r]の音に来るたびいちいちリンゴをほおばる人はいませんね。巻き舌はこの「リンゴをほおばる」ようなものだといえなくもなさそうです。 ではどうするか。 ただ舌を喉の方へ引き戻すだけ、これだけです。決して舌の先をカールさせようなどと面倒なことを考えないことです。「巻き舌」しなくてはと自分を呪縛してはいけません。 一点、ここでしっかり思い出していただきたいのは前回の「ぅワ」行の創設です。この二つの組み合わせで[r]はイタダキ。 さあ、ちょっと練習してみましょう。たとえばキレイという意味の pretty これを現場たたき上げで発音すると、どうなるか。まず頭の中では「プゥイティ」と言います。特に「プゥイ」の部分は二つに分けずにまるで一つの言葉かのように、一挙に一息で言いましょう。「ゥ」の部分で舌全体を喉の方へバックさせます。何度か言ってみてください。いかがですか。舌の先は上顎に付かないし巻き舌の面倒さはなくなるし。なかなかいい感じでしょう。では愛する人に言いましょう。Hi, Sweetie. You are so PRETTY this morning!!! どうぞお幸せに。 著者 拝 |
第9話 Lの音(2) 98 2/1 更新 |
これさえ出来れば |
英語の発音を良くしたいと思い立ち、訓練を始めるとどうしても気にかかるのが[R]と[L]の違いです。「これがうまくこなせたら英会話の第一段階は突破したも同然」などと多くの方が技能修得に取り組んでおられます。 なぜこの2つの音がしばしば引き合いに出されるかというと、 違うはずの音なのに我々日本人にはどちらも“「ラ」行に似た音”に聞こえてしまい、なかなか区別がつかないのです。つまり、ややこしい音の中でもっともポピュラーと言うのがその理由でしょうか。 例えばlight も right もどちらも「ライト」。 readもleadもこれまた「リード」です。flyが「フライ」ならfryも「フライ」です。私たちには[R]も[L]もごちゃ混ぜ、両方の音をことごとく「ラ」行で代用してしまいます。一つの音として片づけてしまいます。ご承知のようにこれらの言葉はまったく意味が異なりまので、それを一つにしてしまうというのは危険極まりないことです。何とか区別をつけたいと願うのは当然の欲求といえるでしょう。 でも、ご安心下さい。ドライブしていて「信号」のところで「右折」して、と、明瞭に話せる日はもうすぐ到来します。「間違い」の「長い」トンネルはすぐ抜け出せます。 では始めましょう。まず、[R]の音。これは第7話と第8話で扱いましたので「現場たたき上げ」流のコツはおわかり頂いたことと思います。[R]は絶対「ラ」行ではあらわせない音です。では、[L]はどうでしょう。もし、キレイでなくて良い、ナチュラルでなくて良いとお考えでしたら、日本語の「ラ」行で代用されても事は足ります。音を出す為の大切な要素。つまり「舌の先が上顎に当たる」という必要かつほとんど十分な共通項があるからです。「ラ」行も[L]も必ず舌の先が上顎に当たります。 ではナチュラルな[L]を出すにはどんな工夫が要るのかをお話しします。一番のコツは、舌の先がどこにどのように当たるか、場所と強さの加減です。 まず我々はどうやって「ラ」行を出しているかを知りましょう。多少の個人差はあるでしょうが、おおむね舌の先を上の歯の付け根の少し後ろ、こんもり盛り上がった歯茎、大陸棚のようにな部分をはじきながら出しています。これは実は英語の[T]の音を出す部位で[L]に当てはめようとするかなり強烈なサウンドになってしまいます。短くて強すぎてしまうのです。 では[L]はどうすればうまく出せるのか。舌の先を上の歯の裏から付け根にかけてそーっと押し当てたままで頭の中では「レレレレ」をイメージしながら発声します。聞こえてくる音は「ウ」に近い感じがします。それでOKです。 さて一つ注意点があります。「レレレレ」の代わりに「ルルルル」をイメージしてはいけません。口が尖がってこもった音になってしまいます。出来るだけ大きな口を開けます。最低小指が口の中に入るくらいの歯と歯の隙間が必要です。我々は、不思議なことに[R]のときに開けすぎてはいけない口をいっぱい開け、大きく縦に開いて発音する[L]のときに口を尖がらせてしまいます。こうするときれいな音が出難くなります。 ではちょっとがんばってみましょう。Could you turn right at that light? 著者 拝 |
第10話 Wの音(1) 98 2/15 更新 |
実は強敵です |
この音はなかなか手強いです。前回扱いました[L]と[R]や第2話の[TH]が初級編とするとこの[W]の音は上級、トップクラスの難問です。「watch
やwater簡単じゃない、ちょっと大袈裟じゃないの」といぶかしく思う方もおられるかもしれませんが、なかなかどうして。これからその理由をご説明致します。 まず、危険を顧みず英語の音を大胆にもたった二つに分類してみます。第一のグループは日本語とはかなりかけ離れた音。第二のグループは日本語にそれらしく似た音、というふうに。 これまで(第二話〜第九話)考察してきた音はどれも第一のグループに属します。ですから日本語とはほぼ決定的に違った発音方法が必要です。そしてこの事、つまり経験したことの無い発音技術を習得することが学習を始めたばかりの人には「難しい」と写るのです。がしかし、これらの音にかぎって(現場たたき上げ的な)適切な指導を施すとほんの数秒でマスターしてしまうことがたびたび起こっています。違いすぎるがゆえにひとたびコツをマスターするとあっという間に新しい技術が身に付いてしまうのです。読者の中には[TH]や[F]の音がずいぶん上達された方がおられることでしょう。練習方法を間違えなかったら、そういう嬉しい結果が次々出てくるのです。そして、申し添えておきますと、第一のグループの音だけでもマスターできればそれはそれはずいぶんステキな発音になるのです。この事は神仏に誓って請け合います。 さて、第二のグループには[W][M][N][P][B][Z][E]など一見苦もなく出せそうな音、言い換えると日本語でなんとか代用できそうな音が並んでいます。この「代用できそう」というのが曲者なのです。これらの音を日本語のままで用いていると残念ながらカタカナ英語からの脱却は難しいでしょう。ほぼできないと、言っても過言ではないと思います。特に、かなり上達された方で「だいぶ進んで来たんだけど、テープに録音するとなんだか不自然で。。。もっとナチュラルに話したい」と苦しんでられる方は、きっとこの第二のグループの音群で今一歩の努力が必要なのではないか、と言うことです。(自分の実力も棚に上げて偉そうなことを言ってスミマセン。著者自身もこのレベルかと、自己判断しています。フロントページで“English”をクリックして下さい。私の生の声を聞いて頂けます。) では[W]の音はどんなとき必要になるのか、ちょっと例を出してみましょう。例えば penguinこれなどはほとんど「ペンギン」や「ぺんグイン」ですませてないでしょうか。あるいは language これも「ランゲジ」や「ラァングエジ」あたりでお茶を濁してませんか。wood や with もあっさり「ウ」でまかなってませんか。 次回では、どう出せばいいのか、簡単なイメージトレーニングを交えて考えてみましょう。ではご期待下さい。 著者 拝 |